医療技術の発達などで平均寿命が延びている昨今、長く健康に暮らすためのライフスタイルが注目されています。食事のとり方や運動などの取り組みと同様、健康に暮らすための住まいづくりも需要が高まってきています。
今回は、自然素材を活用した健康住宅について詳しく解説。健康住宅の特徴や作り方などをご説明しますので、これから住まいづくりを検討している方はぜひ参考にしてください。
■健康住宅とはどのような住まいか
健康住宅とは比較的最近生まれた考え方で、法律などで明確に定義されたルールはありません。言葉の意味から何となくの意味は分かりますが、実際にどんな住まいかイメージするのは難しいですよね。まずは健康住宅の特徴について、3つのポイントに注目してみていきましょう。
・化学物質が少なく健康被害が起きにくい
住まいに使われる多くの建材には接着剤や保護剤が使用されていて、そこに含まれる化学物質で健康被害が発生しています。健康住宅は化学物質の少ない自然素材を使っていて、健康被害の発生を抑えているのが特徴です。
例えば一般的な住宅の床に使われる合板フローリングは、薄い木材を接着剤で何層にも張り合わせて作られています。材料のロスが少なく低コストで作れるため、コストダウンを図る一般住宅の標準仕様となっていることが多いです。こうした化学物質が含まれる建材は多く、住宅の気密性が上がったことによりシックハウス症候群などの健康被害が増加しました。
健康住宅はこうした建材の使用を減らし、住まいの中の化学物質を抑えることで健やかに暮らせるように工夫しています。化学物質に敏感な方はもちろん、一般的な感覚の方にとってもメリットは大きいといえるでしょう。特にこれから子育てする世代の方は、ぜひ取り組みたいですね。
・部屋同士の温度差が少ない
健康な暮らしをするための住まいは、部屋ごとの寒暖の差が少ないという特徴もあります。寒い冬場に暖房の効いた部屋から移動すると、廊下や階段など寒い部屋を通る際ヒヤッとして不快を感じることがありますよね。この時からだが急に冷やされることで血管が収縮し、血圧が上昇することで心筋梗塞などを引き起こす「ヒートショック現象」が起こりやすくなります。
健康住宅は家全体の断熱性能を高めることで部屋ごとの温度差を無くし、ヒートショックが起こりづらい点が特徴。ヒートショックは高齢の方に起こる症状と思われがちですが、若い方にも発生する可能性があるため高齢世帯以外にもメリットがあります。また住まいが長寿命化している昨今では、将来のことを考えると備えておきたい性能でもあります。
冬場だけでなく夏場の冷房も効きやすくなるため、一年を通じて快適に過ごせるというメリットも。光熱費の軽減にも役立ち、地球環境の保護にもつながるなどこれからの住まいで主流になりそうな性能です。
・快適に過ごしやすい空気
健康住宅は、快適に過ごせるきれいな空気を維持する造りになっているのも特徴の一つです。私たちは毎日無意識に呼吸をしていますが、ホコリや湿気が多い場所に行くと「空気が悪い」と感じますよね。いやな臭いやむせるような感覚は体が危険を察知した証拠であり、精神的にも肉体的にも悪影響があります。
健康に過ごすためには、ホコリやカビなど不純物の無いきれいな空気を保つことが大切です。気持ちの良い空気は、ストレスのない快適な暮らしにも欠かせません。
■健康住宅に求められる性能と構造
健康住宅がどんな住まいか分かったところで、どのような性能や造りが必要になるのか具体的にチェックしていきましょう。
・断熱性/気密性
健康住宅は部屋ごとの温度差を無くし、家全体を温めやすくするために断熱性と気密性が求められます。現在ほとんどの住まいでペアガラスが標準採用となりつつありますが、窓だけでなく家全体の性能を上げる必要があります。
断熱材を入れたり気密性の高いサッシを採用したり、構造の工夫とともに、寒い通路を無くすなど間取りの工夫も大切です。リビング階段などで単体の通路を無くし、家全体を温める仕組みもヒートショックを軽減するための一つの手段。住宅の断熱性能が低かった時代は大きな空間は冷暖房効率が低いとして避けられていましたが、性能が向上した現代では有効な方法です。暖房器具の数を減らせば、入居時の初期コストを抑えることにもつながります。
・自然由来の材料
無垢フローリングや漆喰壁など、自然素材そのままの建材は化学物質が少ないため健康住宅には欠かせないものです。室内の見える部分だけでなく、柱や土台、梁などの構造体も無垢の木材でそろえれば、さらに化学物質を抑えられます。
これらの自然素材には、余分な湿気や嫌な臭いを吸着してくれる空気清浄効果もあります。化学物質を抑えつつ、カビやダニなどの発生抑止も期待できるため一石二鳥。また、人によって好みはありますが、さわやかな木の香りはリラックスできてストレスの軽減効果も。
また、合板フローリングやビニールクロスなどに比べて耐久性が高く長く使える点も自然素材の特徴です。適切なメンテナンスをすれば、美しい仕上がりのまま健康に暮らすことができます。
・換気性能
住宅の気密性が向上してすき間風などがなくなった分、空気を入れ替える換気性能の確保も健康な生活に欠かせません。シックハウス症候群の増加による健康被害を受け、現在の住まいでは24時間換気が義務付けられています。しかし、ただ換気システムを導入すればよいというわけではなく、間取りに合わせた換気計画が大切です。
換気システムを設置する場所に配慮し、家全体の空気が効率よく入れ替わるようにする必要があります。春や秋などの季節が良い時期は、窓を開けて自然の空気を採り入れられるように窓を配置するのも有効です。特に洗面所など湿気が多くカビが発生しやすい場所は、排気と吸気の位置を工夫して、湿度を下げられる造りにしてあげましょう。
換気をするとエアコンで快適な温度にした空気が逃げてしまうイメージがありますが、最近は熱損失の無い換気システムなども登場しています。暑さ寒さを感じないようにして快適な空気を保ち、きれいな空気で過ごせる住まいを目指しましょう。
■健康住宅づくりでこだわりたいポイント
上で述べた健康住宅の基本的な作り方のほかにも、細かいコツやこだわるべきポイントを紹介します。
・自然素材の質感やデザインも活かす
前述したように自然素材を使うのが健康住宅の基本となりますが、せっかくなら自然素材が持つ美しい意匠性も活かしましょう。
化学物質が少ない無垢の木材や漆喰の塗り壁は、手が込んだ高級な造りの印象を与えます。一つとして同じものがない自然素材を使うと、世界に一つだけのオリジナルデザインになるため満足度も高くなるでしょう。
フローリングや壁面、建具など表面的な部分だけでなく、柱や梁などの構造体をあえて見せるデザインも素敵に仕上がります。自然そのものの木は見た目にも美しく、見える場所に配置しても意匠性は十分。自然素材に囲まれたナチュラルで安らぐ空間は、ストレスを軽減して健康な暮らしにもつながるでしょう。
・家具などインテリアも自然素材を選ぶ
柱や梁などの構造材から仕上げ材までこだわった健康住宅は、設置する家具やインテリアの材質にもこだわりましょう。せっかく自然素材できれいな空気になっても、接着剤や化学物質を含むテーブルやチェアを置いてしまったら意味がないですよね。
ダイニングテーブルやカーテンレールなど木材を使ったインテリアは、接着剤を減らした無垢材のアイテムがおすすめです。集成材や合板製品と比べると高価な傾向がありますが、耐久性が高く長く使えるため、長い目で見ると結果的にお得になることも多いですよ。安いものを買い替えるスタイルに比べて地球環境への負荷も少ないため、お子さんや自分たちが暮らしやすい未来を守ることにもつながります。
リビングに置くソファも合皮などの化学合成品ではなく、綿や麻、本革などのオーガニック素材を選ぶと良いでしょう。
・掃除しやすい間取りにする
せっかく材料や構造にこだわっても、住み始めてから汚れやごみが溜まってしまったら意味がありません。間取りに工夫して、毎日のお掃除がしやすい住まいにすることも重要なポイントです。
なるべく凹凸の少ないシンプルな間取りにして掃除機をかけやすくして、ダニの原因となるホコリやゴミを溜めないようにしましょう。段差のないバリアフリー空間にすると、お掃除ロボットを活用しやすいというメリットもあります。
使いやすい収納を十分に設けて、床面に物を置かないようにするのも清掃性につながります。家事動線などにも配慮し、気持ちよく健康に過ごせる間取りづくりをご提案します。
■健康住宅をモデルハウスでチェック
化学物質を省いて高い断熱性能を持たせた健康住宅のつくりは、実際の建物でチェックしましょう。気持ちの良い空気や暖かい雰囲気は写真や文章だと伝わりません。実際に触れて感じてみることで、ご紹介したメリットなどもはっきり理解することができるでしょう。ただし、一般的な住宅展示場などでは自然素材の健康住宅が少なく体験するのが難しいです。大野工機は100%国産材を使用した健康住宅のモデルハウスをご用意しています。お気軽に見学いただき、住まいづくりの参考にしてください。
■まとめ
健康に暮らせて長く暮らせる住まいづくりは、これからの時代スタンダードなスタイルになっていくでしょう。これから住まいづくりに取り組むのであれば、早めに採り入れておきたいところ。大野工機は地元岐阜県の国産木材をはじめ、自然素材を扱ってきた経験をもとに健やかな住まいづくりをサポートいたします。性能・デザイン・暮らしやすさなどどんなこともお気軽にご相談ください。